中世のことばと絵―絵巻は訴える (中公新書)

著者は日本中世史の専門家。歴史学の手法を使って美術史の分野に踏み込んでいることで知られる。本書でも『絵師草子』という絵巻物を取り上げ、後醍醐期の日本社会を解き明かそうとしている。絵巻がミステリのように解明されていくのは圧巻。結論にも納得できる。なかでも嬉しいのは、解明の過程を明示してくれること。これから中世史／美術史を学ぼうとする学生にも有用だろう。途中、著者と聞き手の対話形式にして、自身の手法の問題点や疑問点を明示しているのも上手いやり方だ。