一刀両断 (新潮文庫)

週刊誌の連載記事(主に2016年)を纏めたものだが、強大な軍事力を背景とした中国の覇権主義を中心として激動する世界の中で"美しく勁い"日本を守って行くための直言を満載した果断の書。背景には内向きになっているアメリカの姿勢があり、そのために日本は国際問題に積極的に関与すべきという主張である。これはG7の日本開催に当って述べた次の一文に要約される。「日本の役割は中国の暴走を抑止するのに十分な経済力と軍事力の枠組み確立の先頭に立つ事」「軍事力」という言葉を忌避する方もいらっしゃるとは思うが、言霊主義の様に「平和、平和」と唱えていれば「平和」がやって来る訳ではなく、「軍隊を持つ国→戦争をする国」という短絡的な発想をせずに、「力(軍事力)」が必要であると現実を見据えているのである。"永世中立国宣言"をして平和のイメージが強いスイスが実はヨーロッパ有数の軍隊を持っている事を知らない日本人が多いのではないか。そんな「平和ボケ」している日本人の方に是非読んで頂きたい。第一、トランプの暴言の様だが、日米安保によってアメリカ人は日本のために血を流すが、その逆はないという事実を認識すべきである。自国の安全保障を他国に委ねて、自国は平和だと言っている主権国家があるだろうか ? この状況を脱皮するためには「憲法改正」しかないのである。この他、中国が南シナ海、東シナ海(尖閣諸島)のみならず千葉県沖まで侵犯している事、日中戦争において知られていない日本兵の美談があった事、中韓が日本の土地を買い漁っている事、中国問題において「朝日新聞」が犯した大罪、「原発事故→原子炉の(再)稼働困難・廃炉」といった短絡的なポピュリズムへの批判(今後は科学技術力の勝負になる事)といった話題が満載かつ史料に基づいているので参考になる。ただし、天皇に関する記述に対しては違和感を覚えた。